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Cover of 肉弾列車と紅い薔薇

肉弾列車と紅い薔薇

✍ Scribed by 土御門靖虎


Book ID
110839640
Publisher
doncha.net
Year
2018
Tongue
Japanese
Weight
109 KB
Category
Fiction
ASIN
B07CBJ679R

No coin nor oath required. For personal study only.

✦ Synopsis


1997年にコールドスリープされた高校生が目覚めた150年後の未来世界は、ヴァーチャル・リアリティーと人工知能に支配されたディストピアだった!新世代サイバーパンクSF。
※18禁ではありません。
増補改訂した第二版です。肉弾列車と紅い薔薇に加筆修正を加えました。

合計文字数 126,075文字、原稿用紙 315枚分です。

突き抜けるような青い青い空が広がっていた。
目を細めて上を見上げると、高い天井は子宮の様に丸く半円球のドーム状になっていて、中心点に向かって蜘蛛の巣のように窓枠が張り巡り、そこにガラスが嵌(は)め込まれ、網の目状の隙間から青い空が見えていた。
「ここはどこだ?」
俺は自分を見失っていた。自分の名前はしっかり覚えている。しかし、自分が今どこに居るのか見当もつかない。言い知れぬ不安と、寝具がずぶ濡れになって水没していくような不快感を味わっていた。
上半身を起こそうとするが、身体がガチガチに硬直していて動かせない。まるで美術室の石膏像にでもなったかのようだ。フルマラソンを走り切った直後のように身体がこわばっている。
俺はギチギチときしむ首だけを回して部屋を見渡した。
空虚な部屋だ。装飾も何もない。壁や窓枠は白で統一されていた。床だけが茶色の木材のフローリングになっている。天井から続くドーム状の曲面を描く壁には横幅の広い窓があり、そこからも青い空が見えた。
明るい陽射しが差し込み、空気中のチリがキラキラと輝いている。
三十畳ほどの丸くて広い部屋の中央にベッドがポツンと置かれ、俺はそこに寝かされていた。清潔で、隅々まで掃除されている。居心地が悪くなるくらい綺麗だ。
ベッドの周囲に俺を見守るかのように医療機械が幾つも置かれ赤や青のランプが点滅している。機械から何本もチューブが伸びて俺に繋がり、管の中には赤や青や黄色や様々な色の液体が流れている。
数えきれないほどのケーブルが身体に繋がっている。おそらく、心拍とか脈拍とか脳波とかを計る目的だ。病室で見たことがある。
俺は灰色の半袖トレーナーのようなものを着せられていた。
「お目覚めかしら?」
白衣を着た女性がベッドの傍らに立って、俺の顔を眺めていた。いや、観察していたと言うほうが的確な表現かもしれない。冷徹な眼差しは俺に対して何ら同情を抱いていないことが感覚で分かる。
「ここはどこだ?」
俺は同じ質問を繰り返した。
「太平洋上よ」
「はあ?」
「ここは船の上。この船は病院船で、あなたはロサンジェルスで治療を受けた患者で、日本へ帰るところよ」
段々と状況が飲み込めてきた。
「それで、あんたは看護師さん?」
焦点のうまく合わない目を凝らして白衣を着た女性を見つめる。黒くて長くてツヤツヤした髪、前髪を眉の上でバッサリとカットしたオン眉、長い睫毛、大きくてつぶらな瞳、スッと通った鼻、ぷっくりした唇にピンクのルージュを引いている。右のあごに扇情的なホクロがひとつ。耳に血のような赤い色をした宝石のピアス。
縁の細い赤いメガネをかけている。顔の輪郭は卵形で、よく見るとかなりの美貌だ。指先に赤いマニキュア。身長は百七十センチくらい? いや、ハイヒールを履いているとしたら百六十センチ前後だろうか?
俺の寝ている位置からはその女性の脚が見えない。豊かな胸は白衣の下でパツンパツンにはち切れんばかりに膨らみ、ウエストは引き締まりヒップへと続く緩やかなカーブを描いている。スタイルも抜群だ。
まだ若い。いいとこ二十歳くらいか。
「いいえ、あたしはドクターよ。専門は再生医療。桐島麗央奈よ。よろしく、桜庭健吾君」


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